「サブプライム後の新資産運用」はひどい本

中原圭介著、「サブプライム後の新資産運用」が、それなり気の売れ行きのようだ。キャッチーなタイトルが良く出来ていて、思わず手に取ってしまう。そこで、実際に読んでみた。

サブプライム後の新資産運用―10年後に幸せになる新金融
リテラシーの実践
サブプライム後の新資産運用―10年後に幸せになる新金融リテラシーの実践中原 圭介

おすすめ平均
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stars誠実の一言
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アマゾンのコメントの評価が気持ち悪いくらい高く、こう言った本ほど中身が結構ひどかったりするのだが、……・、案の定、ひどかった

いろいろ疑問点はあるが、当サイトと関連が深い投資信託の部分。

投資信託は本当に儲かるのか?」という行で、「年利5%のリターンがあったとして20年間保有した時に、収益が67万円なのに対し、支払う手数料が55万円」などと書かれています。

しかし、この投資信託は、「手数料3%、信託報酬2%」の言語道断なファンドで語られており、当サイトでも最も嫌悪する最低の投資信託の例を引き合いに出して、投資信託はダメな商品だと断じています。

一方でETFは良い商品だと述べている事から、コストさえしっかり認識すれば投資信託も良いという事は理解されており、右に振ったり左に振ったり、特に初心者の読者を大きく混乱させる内容となっています。

コストさえしっかり把握しておけば、投資信託ほど庶民が気軽に投資できる金融商品はなかなか無いと、管理人は考えています。

コストを含めた過去のリターンがいくらなのか、例えば下記のページをご覧になって下さい。キチンとリターンを得られるはず、と言うのが分かるかと思います。

参考ノーロード・低コストのバランス型投信・完全比較

もう1点気に入らないのが「国際分散投資による長期資産運用の弱点」と言う部分。最近は世界各国の株価が連動してしまって、十分な分散効果が働かないから、と言うのが大きなポイントです。特にここ4,5年は、外国株が大きく上がったから儲かっただけだ、との主張をされていますが、そもそも4,5年で投資成績を論じる事自体、長期投資の考え方とは全く異なっています

コチラのページを見ていただくと分かる通り、毎年のように、資産の増加するアセットクラスは移り変わっています。

キチンと分散投資をしているからこそ、ここ4,5年は外国株の値上がり益を、しっかりと享受する事が出来たと考えるべきでしょう。同じ現象を、どう見るかによって全く印象の異なる世界に持っていける、とても(悪い意味で)良い例だと思いました。

ちなみに長期資産運用はリスクが大きいとの認識は、管理人も同様です。

参考本当は、長期投資はリスクが高い

ただ、だからこそ、国際分散投資なのです。


著者は、先に書いたように、世界中の金融商品が連動してしまっているサブプライム後の世界では、外貨預金が最善の選択肢だ、と述べています。

たしかに、株式市場のボラティリティ(変動)は比較的大きく、例えば日本株は08年6月の高値から、現在(08年10月3日)まで25%もの下落率となっています。

それに対して、ドル/円のレートはここ1年半でも約17%の変動ですから、リスク管理の観点からは有利だと思います。

しかしながら、為替も、世界的に相当な連動性を持っており、ドルと同時にあらゆる通貨が円に対して連動して、安くなっています(つまりかなりの円高)。

この点を考えると、株式投資はダメで為替取引は有効と言うのは、どう見ても矛盾しています。


しかも最もおかしな理屈なのが、「外貨預金こそこれから最も注目されるべきだ」、との主張。ソニー銀行あたりならまだ許せますが、外貨預金は明らかに問題商品です。著者は、外貨FXさえもやってはいけないと言っていますが、外貨FXはレバレッジをかけなければ、これほど外貨預金の代わりになる素晴らしい金融商品はありませんので、いったい何を考えているのか、このあたりはサッパリ理解できません。

参考外貨FXと外貨預金、外貨MMFを完全比較

経済状況に合わせて、外貨預金への投資の割合を30%~50%に変動させる(株式は0~60%)、などと述べており、しかも複数の通貨を売り買いするポートフォリオを提言しています。

管理人は、複数のファンドやETFを売買した経験からすると、著者や一部の限られた投資家ならいざ知らず、普段仕事を持っている大多数の一般投資家にとって、こんな事は到底、不可能だと思えます。(その外貨預金、1~2ヵ月物の定期預金にして、常に監視せよ!との仰せ)

しかも、景気の動向を見計らって、株式や外貨を売ったり買ったりするのですから、こうなると完全に、ごく普通の株式投資と同じ世界です。

このような本を見ると、いかにも自分でも出来そうに感じるでしょうが、それができたら多くの投資家が、投資の世界で損失は出さないのです。完全に、「言うが易し、行うが難し」の典型でしょう。


だからこそ、管理人は投資信託を資産運用の、コアと位置付けています。世界分散投資の出来るポートフォリオであれば、円高の時にたくさん買っておけば、後に著者の言うように、「超長期的には必ず円安になる」と言うのならば、投資信託であっても為替差益が発生しますから、同じ事でありましょう。


著者の言うように、毎日相場に張り付いている訳にはいきません。土日だって家族と目いっぱい過ごしたい人もたくさんいらっしゃるでしょう。

毎月一定額をコツコツと積み立てる投資、そして今のように大きく基準価額が下落した時にスポット購入をするような自然体の投資が、庶民にとっては、最も望ましいと思うのです。

参考投信積み立ての恐るべきパワー!

なお最後に、「今までの常識は通用しない」とか、ノーベル経済学賞を受賞したような、学問としては極めて完成されている「現代ポートフォリオ理論を否定」したり、「破たん寸前の日本」などと恐怖心をあおって、最後にさりげなく自社のホームページに読者を誘導するのは、この手の本に良くありがちなパターンです

この本だけで、自分の考えを固定させるのではなくて、幅広く金融関連の本を読んで、ブレずに運用できる基礎を、築きたいものだと感じました。

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