楽天証券投資セミナー・竹中平蔵さんの基調講演(その1)

2009年7月4日(土曜日)、投資信託や海外ETFの品揃えで高い評価を得ている人気の証券会社、楽天証券さんが開催する大規模セミナー、「楽天証券サービス開始10周年記念投資セミナー」に行ってきました。

その時の基調講演、竹中平蔵さんの「世界経済危機と日本の行方」の様子を、ライブ風に再現しています。セミナーに出席した感じで、お楽しみください!

実際にお目にかかった竹中平蔵さん、案外小柄な方でした。でも、やはり他の人とは格が違う!と言った感じでした。

こんな素晴らしい人を生かし切れていないニッポンと言う国、一体どうなってるんだ!と言う思いも強くしました。(写真は竹中氏公式サイトから)

さて、能書きはこのくらいにして、竹中さんの講演です。

竹中平蔵です。久しぶりに大阪にお招きをいただきまして、楽天証券さん、ラジオ日経さんの大変りっぱなおめでたいお席で、皆さんの前で、お話しできることを大変光栄に思っております。

ちょうど朝、8時から出演した今日のウェークアップは、東国原知事がお出になって、自民党から町村前官房長官、そして、地元京都、民主党の前原前民主党代表という方々とご一緒で、色々、議論してきたことも踏まえて、日本の経済、そして世界の経済で、今一体何が起こっているのか、皆さん大変ご関心があると思いますので、問題の提起をします。

冒頭に申し上げておきたいと思うのですが、今日、かなり思い切ったことを言おうと思います。日本というのは面白いと思うのですが、こういうふうに大学教授として話をさせていただくと、皆さん一生懸命、好意と敬意を持って聞いてくださるのですが、大臣の時は、どこで何を話しても、悪意と敵意を持って聞かれたなというふうに思いますけれども、今日は、私、何を言っても失言にはなりませんので、賛成していただける方、必ずしもそうではない方、おられると思いますが、私なりの問題提起をしたいと思います。

本当に、今世界で何が起こっているのでしょうか? そして日本は今、どっちへ行こうとしているのでしょうか? その本題に入る前に、ちょっと去年1年で、私が経験したことで、一番印象に残っているエピソードがありますので、今の世界経済の象徴として聞いていただきたいと思います。

去年、海外に30回ぐらい、世界どこに行っても、ものすごい勢いで世界が変わって行って。そして、残念だけれども日本がそこから取り残されているのではないかという懸念を持つのですが、その中で最も印象に残ったことの1つなのです。

去年の夏、ブラジルに行きました。ブラジルは去年、日系人移民100年の記念すべき年だったということを覚えておられるでしょうか?

皇太子殿下もその記念でブラジルにいらっしゃった。私もそこに行って、講演をしてきたのですが。

ちょうど100年前、1908年。この近く、神戸港から一隻の船が出ました。笠戸丸という船でした。その笠戸丸には791人の日系人移民第一号が乗っていました。

サンパウロ郊外のサントスという港に着いて、そこからブラジル日系人社会の歴史が始まるのですが、791人から始まった日系人社会は、今150万人になりました。

ちょうど3年半ぐらい前に、私がまだ総務大臣をしております時に、ブラジルに呼ばれる機会がありました。総務大臣というのはテレビ、ラジオの担当でもあるわけですが、日本の地上デジタルテレビの方式をブラジル政府が初めて、外国政府として採用してくれたのです。

その交渉を行っていまして、私が総務大臣、そして二階経済産業大臣と一緒に交渉をして、向こうが日本式を採用しようか、ヨーロッパ式を採用しようか、すごくもめている厳しい形相だったのですけれども二階さんと私で説得しました。ちなみにその時の外務大臣は麻生さんだったのですが、麻生さんは何もしてくれませんでした。【会場】(笑い)

今日の結論みたいなものが出てしまいましたけれども、しかし向こうに行って、調印したわけですが、(ブラジルの)ルーラ大統領、私の顔を見るたびにこう言ってくれたのです。「竹中さんようこそ、いやそれにしても日本人がすごいですね。日系人の方に本当に私は感謝しているのです。」大統領がいきなりおっしゃった。私はもう日本人として、ドキっとするほど、胸がときめくほど嬉しい思いをいたしました。

かつて、ブラジルの主食は豆だったのだそうですが、しかし今はブラジルでは米が主食になっているのだそうです。かつてブラジルにはりんごはなかった。こんな小さなりんごもどきをアルゼンチンから輸入して食べていたのだそうです。

今、ブラジルの八百屋さん、果物屋さんに行くと真っ赤なおいしそうなりんごが安い値段で売られている。ポルトガル語の国なのですが、ブラジルでは特にりんごのことを「富士」と呼ぶのだそうです。

まさに日系人がブラジルの農業を良くしてくれた、そして食生活を変えてくれた。

ブラジルには150万人の日系人がいると言いました。全体の人口1億9000万人ですから、日系人の人口比率は0.8パーセントぐらいです。ところがブラジルで一番いいと言われているサンパウロ大学の学生の日系人比率はなんと10パーセントだそうです。

それだけ教育熱心で、皆さん頑張っているわけで、非常に誇らしい、うれしい話だと思うのですが、問題はここからです

ブラジルから東京に帰ってきて、ブラジル銀行東京支店のある方にお礼の電話をしようと思って電話をかけました。ブラジル銀行東京支店の代表番号をまわしました。今、金融機関は時々、テープが流れますね。口座開設の方は1番を押してください、照合の方は2番を押してください、貸付の方は3番を押してください、まあ例のやつです。

オペレーターとお話しになりたい方は5番を押してください。5番を押しました。「もしもし」、「(相手)もしもし」・・・、ちょっと日本語が訛っているように思ったのです。「もしかしてこの電話はブラジルにかかっているのですか?」と聞きましたら「はい、こちらサンパウロです。」と言っていました。

皆さん、このことの意味がお分かりになりますか?

今、ブラジル銀行東京支店の電話交換手さんはサンパウロにいます。これが今、私たちが直面している社会だと言うことです

2つのことがとてつもない速度で起こっているということ。

第一、グローバリゼーションです。本当に地球規模で考えればいいのです。皆さんの会社のオペレーターもここにいる必要はないのです。ブラジルにいてもどこにいてもいいのかも知れません。つまり世界規模で考えるということが、本当に起こっているということです。

そしてもう1つこれを支える非常に大きな変化が起こっています。技術進歩が起こっています。名付けてデジタル革命

IT革命、バイオ革命、ナノ革命、いろんな言いかたをしますけれども、その技術の根底にあるのは、すべてデジタルな技術であると言われています。圧縮して早い速度で遠くに、に安い値段でドーンと送ることができるのです。

デジタルとは何か?簡単に言いますと、これは数字に変えることだと思えばいい。

例えば皆さん映画や、テレビの番組、映像情報を見ます。音、音楽、音声情報を楽しみます。活字情報も活用します。今、そういう情報をすべて数字に変えることができるのです。そして、数字に変えるからこそ、それを圧縮して速い速度で遠くに安い値段でドンと送ることができるわけです。だから、光ファイバーでインターネットを使ってあんなに便利で安いわけです。

一端、数字に変えたものをまた音声や映像に復元するから、復元したときにすごく正確にきれいに復元できる、これがデジタル革命です。デジタル革命の時代、非常に顕著な特長がでます。キーワードを言うと、追加費用がゼロの社会だということ。

限界的費用がゼロになります。CDやDVDを考えてください。いくらコピーをとってもお金がかからないです。いくらコピーをとっても画質は落ちないのです。この画質が落ちない、追加費用がゼロですから、これが私たちの住んでいる社会を変えました

電話で言うならIPの電話、デジタルの電話は、私の隣の部屋に電話をかけるコストも、地球の反対側に電話をかけるコストも同じだということです。だから日本の企業でも、今、多くのコールセンターは沖縄に作っているのです。沖縄でもできるから。

でも、考えてみれば沖縄にある必要もないのです、サンパウロでもいいのです。これが、私たちが住んでいる社会、さあ大変なことが起こります。

私、日本でオペレーターの方、電話交換主さん、ものすごく一生懸命仕事をしてくれているとは思いますけれども、でもこういう状況になると、このオペレーターさんの給料はどうしてもブラジルの給料や、コールセンターをたくさん持っているインド、アメリカの企業のコールセンター、今、ほとんどインドにありますから、どうしてもブラジルやインドの給料に収れんしていかざるを得ないではありませんか。

これがいわゆるフラット化する社会、私たちが直面している厳しい社会です

よく言われます。私は去年も同じだけ一生懸命仕事をしているのに、今年のほうが給料が下がった、なぜ、おかしい、小泉さんがいけない、小泉改革がいけないんだということを言いますけれども、全然違うということです。

私たちは厳しい社会に住んでいます。こういうデジタル革命とグローバリゼーションが起こると、つまり、オペレーターの給料がブラジルやインドに収斂していることから分かるように、去年から今年にかけて、日本人の能力がより高まっていないと同じ給料がもらえないということです。

今年から来年にかけて、より一人一人が賢く強くなっていないと経済は発展しないということを意味しています。それだけ私たちは、今、厳しい社会に直面している。

だから、今、世界中がこれと向き合って、必死で、この状況に勝っていこうというふうにしているにも関わらず日本では、何か困ったことが起こると誰か人のせいにして、何か昔に戻ればいいことがあると、過去を否定すればいいことがあるというような雰囲気が日本に漂っている。

そんなことでは、本当に世界の中で取り残されていくのではないかと思うのです。私たちの直面している状況は、本当に厳しいです。

この厳しいグローバリゼーションとデジタル革命の中で生きていかなければいけないのだということを受け入れて、そしてどうするか、痛みが伴ってもどう変えていくかということを考えて。政府のリーダーはそういうことを国民に訴えてがんばろうと、だからがんばるという人でないといけないと思います。

大変だから何か、今、お金を出して助けてあげますというようなリーダーは、本当は役に立たないのです。

ブラジル銀行東京支店のオペレーターが、実は東京にはもはやいなくてサンパウロにいるのだと、このことをちょっと頭の片隅に置いていただいて、世界の話、日本の話、本題に入っていきたいと思います。


竹中平蔵さんの基調講演続き、その2へ



管理人コメント

僕が今、個人事業を営んでいる訳、これがまさに、フラット化する社会の典型です。米国の多国籍企業、GE(ゼネラル・エレクトリック)にて働いた時に、竹中氏の言わんとするところが、体で理解できました。

コテコテの日本企業に長く勤めていると、理解しているようで、気が付きにくい事です。

最近、ごく一部ですが、ブログで発言力を増した、いわゆる「アルファブロガー」と呼ばれる人々か出現しています。これも、デジタル革命の世の中ならでは、フラット化した社会であるがゆえに、実現できる事なのですね。

 

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