ブラックロック・ゴールド・メタル・オープン・・・何も報われない不条理
野村證券で2017年の夏に突如売れ始めたのが、ブラックロック・ゴールド・メタル・オープンです。為替ヘッジ付きのAコースが人気で、他に為替ヘッジなしのBコースがあります。これまで長いこと資産が増えずに低迷していたのですが、急に売れ始めたという事は、野村の営業マンが売りやすい「何か」があるのでしょうか。

この時期はちょうど、北朝鮮のミサイル発射が大変なニュースになっていました。社会的な信用不安が高まると金が注目されますから、隣国からミサイルが飛んでくるかもしれない有事を強調して、営業マンが売りさばいていたのかもしれません。
加えて、基準価額が4000円台でしたから、「お買い得な商品だ」と囁いて売りまくっていたかもしれません。そもそもブラックロック・ゴールド・メタル・オープンなるファンドが、本当に買う意味が有るのかどうか、そこも含めてチェックしていきたいと思います。
(2019年2月5日追加)・・・本ページの情報の更新を希望される方は、Q&Aページより管理人までお知らせください。すぐに対応したいと思います。
ブラックロック・ゴールド・メタル・オープンの基本情報
このファンドの基本的な情報(AコースとBコース共通)
信託報酬が異様に高く、呆れて物も言えないような2%超のコストです。購入時の手数料と合わせると、野村證券は初年度にあなたの財産の5%を持っていく魂胆のようです。個人投資家も、きちんとコスト意識を持たないとダメです。購入手数料 | 3.0%(ノーロード投資信託ではありません) |
信託報酬 | 年率2.03%(税抜) |
信託財産留保額 | なし |
運用期間 | 無期限(1995年2月24日設定) |
決算 | 年2回(毎年2月と8月の23日) |
運用会社 | ブラックロックジャパン |
販売 | 野村證券のみで販売 |
このファンドのポートフォリオ
2018年12月末時点のポートフォリオは以下の通りです。48銘柄に集中投資をしています。
ブラックロック・ゴールド・メタル・オープンに対する管理人の感想と評価
どのような投資対象の投資信託なのか?
ブラックロック・ゴールド・メタル・オープンの投資対象は、南アフリカ、オーストラリア、カナダ、アメリカ等の金鉱企業の株式です。Aコースは為替ヘッジがあるタイプで、為替ヘッジ付きはBコースとなります。さて、金の採掘や精錬などの川上工程に関わる企業を金鉱企業と呼びます。世界には500社程度の金鉱企業が存在しており、その中から投資する銘柄を選定します。

それぞれの金鉱企業の金の埋蔵量や、産金コスト等を推計・分析して、株価が割安な銘柄を厳選して投資を実行するアクティブファンドになります。参考指数は、ドル建金価格(ロンドン市場、午後)です。
ここ10年ぐらいは純資産総額が低迷していたのですが、野村証券で急に売れ始めて純資産総額がぶっ飛んで増えました。当時は基準価額が4100円でしたから、お買い得と感じて購入した庶民も多そうです。

ただ、よく見ると急激に売れた時期は2016年で、本ページ冒頭では北朝鮮絡みだと匂わせましたが、売れた理由は分かりません。金や、金に似た金鉱株に投資する背景は色々とあります。
最近では「有事の金」の側面が強いのかなとは思いますが、北朝鮮有事は2017年の出来事ですから、2016年に純資産がぶっ飛んで増加している理由とは別でしょう。
2016年は年初から金鉱株が猛烈に上げましたので、それを見た野村證券の営業部隊が、「今後もますます上がる可能性が有ります!」と、強くプッシュしたのではないかなと思います。
なお金投資と金鉱株の具体的な違いは、下記のようなものです。金に比べて現物性が無い点や、金に比べて値動きが大きいのが特徴です。

株式投資を自分なりのルールに従って売買するタイプの投資家ならいざ知らず、わざわざ投資信託で金鉱株ファンドを購入する意味が、正直よく分かりませんね。
野村證券は一体、どういう理由でブラックロック・ゴールド・メタル・オープンを一般人に推奨して売りまくったのでしょうか。
それにしても300億円近くまでぶっ飛んで増えた純資産は、今や半分ほどにまで落ち込んでいます。個人投資家の連中も、一体何を考えているのか、よく分からいですね。。。
運用指標に対してボロカスの惨敗を喫していて、投資価値は皆無
さて、有事を考慮してリスクヘッジ的に本ファンドを買うのか、あるいはインフレのヘッジの目的で買うのか分かりませんが、残念な事に、ブラックロック・ゴールド・メタル・オープンの運用成績は極めて悪いです。下記、参考指数であるドル建金価格(ロンドン市場、午後)と、本ファンドの基準価額の比較です。なんと設定来では、AコースとBコースのいずれも、空前絶後の大惨敗です。

プロのファンドマネージャーが運用してこの体たらくとは酷すぎます。というか、こんな悪すぎるアクティブファンドを平気で一般人に推奨するとしたら、野村證券の営業マンも相当のワルですね。投資価値皆無のウンコレベルだと断言できます。
高い金出して「ウンコ」を買う奴は、一体何を考えているのか?
こんな酷すぎるファンドであるにもかかわらず、野村證券は購入手数料を3%も徴収して売りつけます。更には信託報酬が2.03%です。細かい話ですが、信託報酬以外のコストもカウントした実質コストは、実に2.4%(こちらは税込み)にも達します。(半年の数字なので、下記を2倍して下さい)

こんなものを間違って10年間も保有してしまったら、実に元本の25%程度がコストで抜かれる勘定になります。そのうえ3%の高額手数料ですから、踏んだり蹴ったりです。
運用成績を考慮に入れて比ゆ的に表現するならば、ルイヴィトンを買うような価格でユニクロかジーユーでも買っているようなものです。高い買い物と言うよりは、「馬鹿な買い物」ですから、このような変な投資行動は厳に慎まなくてはなりません。
どうしても金や、金鉱株に投資したい人の選択肢
コストの観点で考えると、ぼったくり高コストファンドを利用せずに、超低コストの海外ETFを利用すれば良いと思います。もしも金鉱株に投資したいのなら、マーケット・ベクトル・金鉱株ETF(GDX)や、マーケット・ベクトル・ジュニア金鉱株ETF(GDXJ)が代替品となります。
ただ、海外ETFを投資の初心者が買い付けるのは敷居が高いと思います。有事のリスクヘッジやインフレヘッジとして利用するなら、国内で気軽に購入できるノーロード投資信託で宜しいかと思います。
共に信託報酬が0.488%のiシェアーズ ゴールドインデックス・ファンド(為替ヘッジなし)あるいはiシェアーズ ゴールドインデックス・ファンド(為替ヘッジあり)が、その代替えの有力候補になります。(それぞれインデックスファンドです)
ここでは、運用歴が長い別のインデックスファンド、ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)と比較してみましょう。

参考指数が金価格なのに金鉱株に投資するブラックロック・ゴールド・メタル・オープンのほうが、比較にならないくらいに値動きが大きいですね。というか、これらを比較するのは無理がありそうです。
比較をするならば現実的には、FTSE 金鉱業株インデックスを参考指標とする金鉱株アクティブファンド、ブラックロック・ゴールド・ファンド(ノーロード投資信託・信託報酬は2.0%)を検討する事になりそうです。
当該ファンドは為替ヘッジ無しなので、ブラックロック・ゴールド・メタル・オープンのBコースとリターンの比較をしたのが、下記の図になります。ご覧の通り、ほとんど同一と言って良い成績です。

投資信託の名称に「ブラックロック」と入っている事から分かる通り、両方ともブラックロックジャパンが運用しています。ノーロード投資信託か否かの違いはあるものの、共に信託報酬が2%の大台のクソ高いコストであるというのも共通です。
それに、下記のブラックロック・ゴールド・ファンドの月報から投資先銘柄を確認すると、ブラックロック・ゴールド・メタル・オープンとほぼ同一といって良い中身です。恐らく、ファンドマネージャーも同じ人なのでしょうね。

ただ、運用成績も同一に等しいとは言え、野村證券が販売手数料を3%も徴収しているブラックロック・ゴールド・メタル・オープンと異なり、ブラックロック・ゴールド・ファンドはノーロードで買えますから、実際のリターンには3%の手数料分の差がある事になります。
どうしても金鉱株関連のファンドを買いたいという人がいたら、全く気が進まないところではありますが、ブラックロック・ゴールド・ファンドにすると良いでしょう。
ただ、ブラックロック・ゴールド・メタル・オープンは、設定来の24年間という超長期の時間をかけても、トータルリターンはAコースで何とマイナスです。
ヘッジ無しのBコースでも、24年もかけてようやく資産が倍になるくらいの伸び率であり、先進国株式指数のMSCIコクサイインデックスなどは14年で2.9倍も伸長している事を考えると、あまりの報われなさに絶望的になります。

(この表はドル建てなので、その点はご承知おきください。)
こういった現実を見ると、金周辺への投資は極めて難しいという認識を持った方が良さそうですね。相当な腕前を持った投資家だけが、価格変動リスクの非常に大きな金鉱株をタイミングを見計らって売り買いをして、それがまぐれ当たりした人だけが大きく儲けられる。そんなイメージでとらえておくのが良さそうです。
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