野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド・・・野村證券への課金ゲーム

2017年に野村證券で猛烈に売れた投資信託が、野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドです。為替ヘッジ付きのAコースをのほかに、Bコース、Cコース、Dコース、追加で設定されたEコースとFコースがあります。コースの内容と純資産残高は、以下の通りです。

合計で4758億円もの資金が集まっている訳で、野村證券が本気で売りまくると、とんでもない金額になりますね。たった1年半くらいで集金するのですから。

コース 内容 純資産残高
Aコース 為替ヘッジあり、年2回決算型 3030億円
Bコース 為替ヘッジなし、年2回決算型 360億円
Cコース 為替ヘッジあり、毎月分配型 1003億円
Dコース 為替ヘッジなし、毎月分配型 301億円
Eコース 為替ナビ、年2回決算型 44億円
Fコース 為替ナビ、毎月分配型 20億円
野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド


超人気化した理由は、高インカムを狙った世界債券への投資、機動的に資産配分を調整するアクティブファンド、類似したファンドの成績が安定、といった3点のようです。

しかし、これまで数百を超える「カモ向けファンド」を「目撃」してきた管理人からすると、突っ込みたくなるポイントばかりです。順番に、管理人が思うところを書いていきます。


(2019年2月6日追加)・・・本ページの情報の更新を希望される方は、Q&Aページより管理人までお知らせください。すぐに対応したいと思います。



 


野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドの基本情報

このファンドの基本的な情報(全コース共通)

購入手数料 3.0%(ノーロード投資信託ではありません)
信託報酬 年率1.68%(税抜)
信託財産留保額 なし
運用期間 2026年4月16日(2016年4月22日設定)E・Fコースは2018年1月12日設定
決算 毎年4月と10月の16日(毎月分配型は毎月16日)
運用会社 野村アセットマネジメント
販売 野村證券をはじめとして、地方銀行、地方の証券会社、ネット証券など


このファンドのポートフォリオ

2018年12月末時点のポートフォリオは以下の通りです。米ドル建てでの平均利回りは6.1%とかなり高いです。平均デュレーションは2.1年です。格付けはトータルではA-です。

野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドのポートフォリオ



野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドに対する管理人の感想と評価

どのような投資対象の投資信託なのか?

野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドは、新興国を含む世界各国の各種の債券に投資します。下記のように、国債、政府機関債、社債、モーゲージ証券、資産担保証券、ハイ・イールド債券、企業向け貸付債権(バンクローン)など、幅広い債券に資金を投じるコンセプトです。

野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドの投資先債券


多種多様な債券を組み入れた事で、インカム、つまり利回りをかなり高めた点がポイントになります。新興国債券並みの、利回り4.4%程度の水準に落ち着くという事らしいです。(最新の月報では、利回りが6%を超えています)




「良質なインカム」との表現が、なんとなくカモ向けの言葉に聞こえますね。要はハイリスクな債券に資金を突っ込んで利回りを高めた事を、上手く言葉をすり替えているような印象です。

「高利回り=良質な」と言いたいのでしょうが、金融の世界では「高利回り=高リスク」です。三段論法で言うと、「高リスク=良質」になってしまいます・笑。

特にハイ・イールド債券や、企業向け貸付債権(バンクローン)などのハイ・リスクな商品が、猛烈に気になる投資先です。下記の赤枠の投資セクターの部分です。




最新の月報をチェックすると、攻めの資産と明記されている上述のハイリスクな金融商品が、合計で40%近くあります。格付で言うと37%の債券が「投機的」となり、相当なリスクを取っています。(ただしこの数値は、2年前よりかなり下がっています)

金融市場が今のように安定している時には何も問題はありませんが、景気が後退したり、何か市場に動揺が走った時には価格が暴落しかねませんので、注意してください。本来は、百戦錬磨の投資家が取り扱うような代物です。




なお、ハイリスクな債券をごちゃ混ぜにして分散投資すれば、ポートフォリオ全体としては投資適格の格付A-に収まる、「金融工学のマジック」を体現していますね。

リーマンショックで問題となった、「低所得者向けのローンをパックにして世界中の投資家に販売した手法に似ている」と、管理人は思っています。そのような視点で考えても、当ファンドはとてもお勧めできるようなものではありません。

ただ、今なら良いのかもしれませんね。市場が安定していますから。今のようなご時世に投資をして、金融市場が荒れそうになったら直ちに逃げ出すことのできるような投資家には、別に問題は無いのかもしれません。


 


ファンドの運用成績が良いのか悪いのか、全く判断がつかないのが最大の難点

金融機関側が用意した美しい販売資料を見ると、「PIMCOのマクロ経済分析能力を活かし、信用力が高い資産による「守り」と、高利回りで景気回復の恩恵を受ける「攻め」の配分を機動的かつ柔軟に調整します。」と記載されています。

つまり、相場の状況に応じて、最適な資産配分に積極的に調整するとの事のようです。はっきり言って、アクティブに資産を調整できると豪語してきたファンドで、好成績を残したファンドを見た事がありません。

しかも、参考指数やベンチマークを提示していないので、どのように成績が良いのか全く判断不能です。

本ファンドに類似したファンドの運用方針の投資信託における資産配分の調整例が、下記のように掲載されています。これが常に本当に機能するのか、かなりの眉唾ものだというのが、管理人の考えです。

野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドの機動的な資産配分比率の変更


ちなみに、同様の運用方針を採用したファンドの長期に渡る過去のデータも掲載されています。リーマンショック時の損失幅が小さく、その後の市場回復期に好成績を叩き出しているとの事。

野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドのパフォーマンスのバックデータ


しかし、こんなデータを見せられても、運用が上手く行っているのかダメダメなのか、判断のしようがないので、意味が有りません。

こんなもん、もしも野村證券の社内でこんなデータを出して「成績良いっすよ」とか言おうもんなら、「お前は馬鹿か??」と一笑に付されるだけの超アホくさい比較表です。

もしも始点を2007年3月ではなくて、任意の場所に変更したら、いくらでもPIMCOファンドが良く見えたり悪く見えたりするものなのです。資産クラスが異なるものを比較するときは、常にそのような「無意味な比較表」になりますので、よくよく注意しましょう。

しかも、日本円ではなくて米ドル建てでの比較表です。。。円ベースにしたらどんな成績になるのか、全く分かりません。本当に無意味だと思います。




ご丁寧にも、非常に小さな文字で、上記のような一文が書かれていました。あのようなデータを見せておいて、「本ファンドの運用成績と関係ない」という訳です。いい加減です。

もしもこのようなデータを見て「凄い」と感じてしまったとしたら、あなたは野村證券の絶好のカモですし、相場にいる投資家やトレーダー達の良い餌ですし、そもそも投資など全く不勉強か、向いていない人だとしか言えないと思います。氷水を浴びて、考え直しましょう。


本ファンドの代替えとなるものは、残念ながらありません

そもそも本ファンドには、ベンチマークがありません。となると、本ファンドの運用成績の良し悪しは、私たち個人投資家には一切判断できない事になります。

ベンチマークがありませんので、野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドの代替えになるような投資信託やETFはありません。

「しかしそれでは困る」と言うのであれば、結局のところ、全世界の株と債券に分散投資する事のできる、低コストのバランスファンドを買っておけば良いだけだと思います。

下記、為替ヘッジの無いBコースと、債券比率の高い代表的な2つのバランスファンド、セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(信託報酬0.68%)と世界経済インデックスファンド(同0.5%)、及び債券の比率を高めた世界経済インデックスファンド(債券シフト型)(同0.45%)のリターン比較です。

野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドBコースと、代表的なバランスファンドとのリターン比較


野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドが「攻めの債券」などと表現している債券は、結局のところ株式並みの価格変動リスクのあるものですから、だったらマイナーなものに投資をするのではなく、普通に株に投資すれば良いだけだと思います。かなり値動きが似通っているのが分かると思います。

為替ヘッジ付きがどうしても欲しいという人には、債券主体のファンド、かつ外国への投資部分に為替ヘッジを付けたバランスファンド、たわらノーロード バランス(堅実型)が良いのではないかと思います。

あるいは、国内債券比率の高い三井住友・DC年金バランス30(債券重点型)(マイパッケージ)(共に信託報酬0.22%)あたりで良いでしょう。

以下の通り1年強の運用期間でしか比較できませんが、それぞれリスクの低い投資信託なので、実際に保有したらほとんど違和感がないはずです。

野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドAコースとバランスファンドとのリターン比較


もちろん、これらはベンチマークが異なるので単純には比較できませんので、あくまでも「何か代替えになる投資信託を無理やり出も選んでくれ」と頼まれたらの話しです。

今後、野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドの運用成績が、償還期限の10年間でどうなって行くのか、楽しみにチェックしていきたいと思います。

高コストの投資信託で、機動的に資産配分を変更するようなものが、資産形成の王道的な国際分散投資を貫いたインデックスファンドに勝てるとはとても思えません。10年後を楽しみにしていましょうね。


「為替ナビ」タイプのEコースとFコースも販売開始

A~Dコースの大成功に気を良くしたのか、野村グループは2018年に「為替ナビ」タイプのEコースとFコースも販売を始めました。為替ナビとは聞きなれませんね。

これは、ドル円相場に応じて為替ヘッジ部分の比率を変動させるというものであり、円安が進むとヘッジが進み、逆に円高になるとヘッジの割合が低くなります。(下記)

確かに、円安になると今後の円相場は高くなる可能性の方が強いでしょうから、一定の理に適っていると思います。本ページ執筆時点では赤枠のあたりの円相場なので、為替ヘッジは70%~80%程度、効いている事になります。

為替ナビの為替ヘッジ比率


実際に月報を確認すると、80%となっていました。

為替ナビの実際の為替ヘッジ比率


値動きとしては、為替ヘッジ付きのAコースと為替ヘッジ無しのBコースの中間程度となります。実際に調べてみても、以下のようになっていました。ドル円相場が高値圏にあるので、為替ヘッジが強く効いており、Bコースに近い値動きになっていますね。

野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド、AコースとBコースとEコースのリターン比較


ただ、これらについても、前項で紹介したようなたわらノーロード バランス(堅実型)三井住友・DC年金バランス30(債券重点型)(マイパッケージ)の値動きにより近くなるだけのものだと思います。

要は、多大なコストをかけて野村證券グループに壮大に「課金」せずとも、同じような資産形成を十分に低コストで、なおかつ王道的な資産クラスを用いて出来てしまうのです。

人を出し抜いて自分が大儲けする事など出来やしませんから、野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドに過度の期待を寄せるのはやめにしましょう。


 


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