きっとあなたも、新興国債券への投資など、やりたくなくなる筈だ

先日、新興国債券インデックスファンドの事をチェックしていて、驚いたことがありました。インデックス投資をして久しいので大概の事は驚かなくなりましたが、今回の件は、久しぶりに仰天したほどの驚きでした

新興国債券投資の必要性


では一体、何に対して驚いたのか、見出しを見ればもうバレバレではありますが・笑、その驚きについて記して参りましょう。以下、いくつかの項目に分けて考察しておりますので、ご覧いただければと思います。きっとあなたも、新興国債券への投資など、やる気無くします。

※追記:日興アセットマネジメント様から、本件に関してご回答を頂いております。それについては、本ページの下部に追記していますので、併せてご覧ください。

(2018年7月30日追加)



 


新興国債券は必要? 想像よりも、はるかにリターンが低かった

新興国への投資が必要なのか否か問われたら、それは必要だと答えますよね。新興国への投資は、新興国株式に投資する方法と、新興国債券に投資する方法の、大きく2つがあります。(新興国のREITに投資する事もできますが、まだまだマイナーな方法です)

そして、新興国株式への投資に関しては、まず大半の人は、その有効性について疑問を挟む事は無いと思います。しかし、一方の新興国債券については、要不要の判断が人によって大きく異なる印象です。

百戦錬磨のインデックス投資家も、新興国債券をアセットアロケーションに組み入れている人もいれば、全く保有の無い人もいて、いったいどちらが合理的な判断なのか、いまいち分からない事になっています。

当サイト管理人は、インデックス投資の部分には新興国債券を組み入れていませんが、分配金目当ての投資に関しては新興国債券ETFの分配金利回りが高いため、一定程度、購入しています。(⇒当サイト管理人が投資しているもの

新興国債券


さて、新興国債券が不要だと考える人の意見は、「金利が高い国の通貨は下落する事によって、金利差が調整される」というものです。いくら債券投資が魅力的に見えても、高金利国の債券価格は結局は下落していって、先進国や日本国の債券に投資しているのと大差ない結果になるという予測です。

これが本当だとすると、新興国債券だけでなく、先進国債券への投資も、あまり大きな意味はなさない事になります。単なる分散効果だけを狙うという事になり、「標準偏差(ボラティリティ)の値が大きい分だけ積み立て投資に有利かな」程度になりますね。

果たして、過去のリターンはどうなっているのか、気になったので調べてみました。その結果が、以下の図になります。

新興国債券と先進国債券と日本債券のリターン比較


なんと、10年の長期で見た場合、先進国債券への投資はおろか、日本国債券への投資よりも年率リターンが低く、実に期待外れの結果である事が分かりました。

為替の変動を気にせずにしていると、結局は先進国債券も日本国債への投資も、似たような数字に収束するものなのだなと、納得する数字になっています。

リターンは同一なのに、リスクを表す標準偏差の数値に、大きな開きがあるのも特徴的ですね。為替リスクが、価格変動に大きな影響を与えているのだと思います。為替リスクは、想像以上に大きなものなのだなと実感できます。

そして、新興国債券は為替リスクに加えて価格変動リスクも大きいのか、先進国債券よりも標準偏差の数値がかなり大きくなっています。そしてそのリスクを引き受けたにもかかわらず、結局は先進国債券よりもリターンが低い結果になっています。

しかしながら、新興国債券だけが先進国や日本の債券よりも一方的に悪い結果になるのは解せません。これでは投資している意味が本当に無い事になってしまいます。

「何でだろう??」と不思議に思いながら、新興国債券インデックスファンドの月報を眺めて、そこで私は仰天したのです。その内容は、次の項に記します。


 


ベンチマークとの著しい乖離を見ると、必要だとは思えなくなる

チェックしたのは、長期の運用実績のあるインデックスファンド海外新興国(エマージング)債券(1年決算型)です。驚いたのはベンチマークとの乖離です。10年間の運用で、26%以上ものマイナスの乖離を起こしています。

信託報酬は0.52%で、これが10年間累積したとしても、マイナスリターンは5.2%にしかならない筈です。この卒倒するような乖離こそが、新興国債券インデックスファンドに投資しても10年リターンが驚くほど低い原因なのではないでしょうか。

インデックスファンド海外新興国(エマージング)債券(1年決算型)の基準価額とベンチマークとの乖離


もしかしたら、実質コストが高いのかなと思って、運用報告書からチェックしてみました。直近で、こちらも驚くような、年間1%強(税込み)の高いコストがかかっています。

しかしそれでも、1%×10年=11%の乖離にしかならない筈です。・・・と言う事は、月報や運用報告書を読み込んでも理解不能な要因があって、ベンチマークとの大幅乖離を発生させ、それが先進国債券などよりも低リターンにつながっていると想像する事ができます。

インデックスファンド海外新興国(エマージング)債券(1年決算型)の実質コスト


しかし、もしかしたらインデックスファンド海外新興国(エマージング)債券(1年決算型)だけの問題かもしれませんので、同じベンチマークのインデックスファンドで比較的長い運用歴のある以下の2つとも比べてみます。

eMAXIS 新興国債券インデックス(信託報酬0.6%)
SMT 新興国債券インデックスオープン(同上)

3本の新興国債券インデックスファンドのリターン比較


結果を見ると、ほとんど3社のリターンは変わらない事が分かります。やや、インデックスファンド海外新興国(エマージング)債券(1年決算型)が劣りますが、それでもこれだけが一方的にベンチマークと大幅に乖離しているという事ではなさそうですね。

以下のように、上記で最も運用が良好そうなSMT 新興国債券インデックスオープンを見ても、ベンチマークと乖離は極めて大だと分かります。このファンドの直近の実質コストはおおよそ年間0.76%ですから、やはりこの乖離は、著しく大きすぎるといえます。

SMT 新興国債券インデックスオープンのベンチマークと乖離


信託報酬が0.22%と、圧倒的にコストの低いiFree 新興国債券インデックスとも、リターンの比較をしてみました。SMTと全く同一の成績と言って良いくらいです。

どうも、低コストがリターンの増加につながっていないですね。これではコストでファンドの乗り換えをするという意味も成しません。

iFree 新興国債券インデックスのリターン


以上の結果を眺めてみると、過去10年間の実績を見る限りにおいて、次の事が分かります。

・新興国債券インデックスファンドのリターンは先進国債券や日本債券に劣る
・新興国債券インデックスファンドはベンチマークとの乖離が極めて大きい
・ベンチマークとの乖離は実質コストの問題だけではなさそうだ
・低コストのインデックスファンドに切り替えてもリターンが増加するとは言い難い



これらの現象を知ると、「新興国債券への投資当面、は必要ない」という判断をしたとしても、非常に合理的なのではないかと思えてきます。

投資に合理性を強く求めるインデックス投資家の皆さんが、新興国債券をアセットアロケーションに加えていない人が多いのも、実に納得の結果になっています。私も、「ああ、これならばインデックス投資では新興国債券など必要ないな」と思います。

それにしても、何故、新興国債券インデックスファンドは、ベンチマークとの乖離があそこまで酷いのでしょうか? 運用報告書に、理由をしっかりと書いて頂きたいですね。情報開示と言う面でも、かなりイマイチだと思います。

その部分が理解できて、そして改善できて初めて、新興国債券への投資の必要性が出てくるのではないかと思いました。



追記:どうもモヤモヤするので、日興アセットマネジメント様に聞いてみた

それにしても、本件は原因が分からないので、どうもモヤモヤします。先に記したように、当サイト管理人はインデックス投資ではなくて分配金目当ての投資において、上場インデックスファンド新興国債券を保有しています(現在、80万円強保有)。

そこで、運用会社の日興アセットマネジメントさんに、本件を質問してみようと思いました。今後も買い増しする予定ですし、お聞きする資格はあるかなと思いまして。そして、以下の通り質問をさせていただきました。

お世話になっております。当方、SBI証券のNISA口座で、御社の上場インデックスファンド新興国債券(1566)を 買い付けており、タコ足ではない分配金を受け取れるので、安心して長期保有をしようと 思っております。

ところが先日、6月29日付けの月報を拝見したところ、上場来の騰落率が22.57%であり、 ベンチマークの35.84%に比べて、著しく劣っている事に大いに驚いている次第です。

インデックスファンドは基本、ベンチマークと連動するのが常識であり、コストの分だけベンチマークよりも下方乖離をすると言う認識でおります。

この場合、ETFの信託報酬は0.45%であり、設定来の6年間の累計でも2.7%程度にしか過ぎない筈です。その他のコストも入れたとしても、せいぜい5%前後なのではないかと思います。

それに対して、設定来の6年間で13.27%もベンチマークに劣るというのは、どういう理由なのでしょうか? レポートを見ても、その理由を説明してはおらず、長期保有に耐えうるものなのかどうか、非常に疑問を感じ始めている次第です。

大変お手数とは存じますが、今後もタイミングを見て投資金額を引き上げようかと考えていた矢先でもあり、この乖離の理由をご教示いただけませんでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。


メールを打ったのが午後の4時20分です。それに対して、午後6時55分という非常に早い対応にて、機関投資家事業本部ETFプロモーション部、ビジネス・デベロップメント・マネージャー氏より、以下の回答を頂きましたので、これを掲載しておきます。

お問い合わせ有難うございます。 ベンチマークとETFの乖離要因につきましては、以下の要因が考えられます。

<税金部分>
新興国の中には、外国投資家(日本からの投資)に対して、課税を行う国があります。投資をしている債券の分配金、あるいは売買に伴うキャピタルゲインに対する課税がベンチマークに対する下方乖離要因になります。(ベンチマークには課税部分は含まれません。)

<現地口座管理費用>
新興国債券に投資をするにあたり、現地の口座管理費用がかかります。口座管理費用には、口座維持手数料、売買した時にかかる決済手数料があります。新興国の口座管理費用は先進国に比べて高い傾向にあります。口座管理費用は、ベンチマークに対する下方乖離要因になります。

<代替銘柄に投資をしている事による乖離>
外国人投資家に対する規制等により、ベンチマークに組み入れられている債券を購入できないケースがあります。そのような場合、代替の債券を保有する事になり、ベンチマークとの乖離要因になります。以前に比べて、全般的に規制緩和が進んでいるため、現在は乖離要因としては少なくなりつつあります。


以上の要因は、新興国特有の要因で、他の新興国に投資をするファンドでも同様の乖離が生じます。

現在、当ETFの純資産残高は約150億円と比較的大きくなっており、上場当初に比べ、ベンチマークにトラックしやすくなっています。昨年1年間での乖離は約マイナス1%となっており、乖離の幅は少なくなる傾向にあります。

その他、何かでご不明な点がありましたら、お問い合わせ頂ければ幸いです。 よろしくお願い致します。


なるほど、そのような要因があるのですね。新興国特有の要因があるとしたら、投資家にとっては先進国などに投資するよりも不利な条件で戦わねばならない訳で、過剰に新興国債券に投資を行うのは避けたほうが良いのかもしれませんね。

下記、上場インデックスファンド新興国債券のベンチマークと基準価額との乖離状況です。確かに、最近は1%程度の乖離ではあります。2015年くらいから、だいぶ落ち着いてきたのかなという雰囲気はあります。

上場位インデックスファンド新興国債券のベンチマークと基準価額の差異


年度 ベンチマークより劣っている割合
2017年 -1.32%
2016年 -1.19%
2015年 -0.77%
2014年 -1.45%
2013年 -3.83%
上場来 13.27%(6年間)


ただ、そうは言っても2017年は-1.32%の乖離ですから、それなりに大きいですね。これを他のアセットクラスとも比べてみます。比較するのは、以下の3つのETFです。

上場インデックスファンド海外債券(Citi WGBI)毎月分配型(先進国債券)
上場インデックスファンド海外新興国株式(MSCIエマージング)(新興国株式)
上場インデックスファンド海外先進国株式(MSCI-KOKUSAI)(先進国株式)

ベンチマークより劣っている割合
資産クラス→ 先進国債券 新興国株式 先進国株式
信託報酬→ 0.25% 0.25% 0.25%
2017年 -0.39% -5.52% -1.25%
2016年 -0.43% +0.31% +0.26%
2015年 -0.44% -0.7% ±0
2014年 -0.05% +2.64% +0.76%
2013年 -1.75% +0.26% -0.28%
上場来 -1.75%
(8年間)
-1.54%
(8年間)
+12.22%
(8年間)


こう見ると、やはり先進国への投資の方が圧倒的に乖離が少ない事が分かります。先進国債券に比べると、毎年、乖離差がこれだけあると、長期ではかなり不利になるなと理解できます。

なお、新興国株式と先進国株式については、ベンチマークには配当が含まれていなくて、ファンドにはそれが含まれていますから、実態的には配当分だけ、上記の数値よりも悪くなると思ってください。

新興国株式の乖離はやはり大きく、2017年のマイナス5.52%など、あり得ないくらいのマイナスを発生させていて仰天するレベルです。

新興国債券ETFの純資産が150億円台なのに対して、新興国株式ETFは68億円程度なので、そう言った部分も影響しているのかもしれませんが、投資する上での新興国特有の現象や、あるいはそれ以外の何かが常に付きまとうのが新興国への投資なのでしょう。

新興国債券、あるいは新興国への投資は、以上のような不利な状況があるという事を頭に入れて、投資かそれぞれがその必要性の有無をよく考えて頂いて、投資判断を下していただければと思います。

なお、ご回答いただきました日興アセットマネジメント様には、感謝です。素早いご対応に、何と申しますか、ファンになりました・笑。これからも上場インデックスファンドを安定的に買い増ししていきたいと思います。


 


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