竹中平蔵氏基調講演「2014年のアベノミクスと日本経済」完全レポート

2014年2月1日(土曜日)、マネックス証券さんのお客様感謝デーに行ってきました。とても楽しみにしていた催しで、しかも無料です。

それにしても、竹中平蔵さんの話って、なんでこんなに素晴らしいんでしょうね?

僕の隣に、20代の若い女性が座っていて、竹中さんの講演のためだけに、この場所に来ていたようです。熱心にメモを取って、竹中さんの講演が終わると、颯爽と帰途についていました。女性なのに、かなりカッコよかったですね。


 


アベノミクス、三本の矢の評価は?

悲観する必要はないが、楽観もできないアベノミクス

皆さんこんにちは。ご紹介いただきました、竹中平蔵です。今日はマネックス証券さんの大変りっぱな講演会にお招きをいただいて、投資、経済、金融。そういった問題に大変ご関心の高い皆さんの前で、まとまったお話ができますことを大変嬉しく思っておます。

時間限られておりますので凝縮して、経済、政策、どのように見るかという話をさせていただきます。

株式の市場とかマーケットの話はあとでご専門からいろいろ具体的な話をしてくださると聞いていますので、私は世界全体の流れ、日本全体の流れ、 特に今は経済と政治が切っても切れない関係になってますので、そういう大きな流れについてお話をさせていただければ嬉しいと思っています。

マネックス証券さん、大変、絶妙なタイミングで、この会を開いていただいたと思います。一昨日、ダボス会議から帰って来ました。先週ダボス会議がありまして、ご承知だと思いますけども、安倍総理がそちらに行かれました。

1月の下旬に毎年毎年、世界の経済リーダーたちが集まって、定期的に、その経済の議論を集中的に行う会議、今回で44回目になるんですけども、そのオープニングのキーノートスピーチに、日本国総理大臣が招かれたというのは、今回が初めてなんです。

私、今ダボス会議の理事をしてます関係で、これは本当に貴重な機会に招待を受けたので、ぜひ行ってほしいと安倍総理にお願いをしました。安倍さん本当にものすごい強行な日程の中でダボスに行ってくれて、素晴らしいスピーチをされました。大変、世界の関心を集めるスピーチをされました。

そして、私はその後にベルリンでアベノミクスの講演をしたりして、昨日帰ってきたんです。まさにその瞬間に国会が動いていて、ほんとにこの政策、どっち行くんだろう? 世界で注目している中での講演会ですので、ぜひ具体的な話をさせていただきたいと思っているんです。

安倍さんすごかったですよ。21日に日本を立ってですね、それ21日の夜にチューリッヒに着くわけで。そこで1泊して22日の朝にチューリッヒを出て、ダボスまで3時間ぐらいかかるんですね。22日はずーっと夕方までびっしりの講演と記者会見などをこなして、そしてすぐ飛行機に乗って、23日に日本に帰って来ます。

21に出て23日に帰って来るわけですよね。で、24日に国会の開会があってそこで施政方針演説をやって、1日だけ日本に居て、そして25日からまたインドに行かれたわけです。

去年、安倍さんは1年間で13回、海外出張をされました。そして今年、1月1カ月間で3回、海外に行かれました。ほんとに精力的にやって、その中でアベノミクスが世界にも注目されるようになってきた。

しかし残された課題もまだ非常に大きくて、そして、今年の株価がどうなるか、経済がどうなるか。私は非常に大きなチャンスに恵まれていると思いますけれども、それが実現するかどうかは、本当に総理のリーダーシップいかんにかかっていて、基本的に私は悲観論ではありませんけれども、ぜひ大きな期待を持って、日本の経済を見ていきたいと思いますけれども、残された障壁もまだまだかなり大きい。そういう状況ではないかと思っております。

マーケットの話は後からいろいろ出てくると思うんですけれども、最近いろんな国際会議に出て、必ず話題になる1冊の本がありますので、ぜひその本のタイトルだけご紹介しておきたいと思います。

シンガポール国立大学のマグバニ教授という方が書いた『ザ・グレイトコンバージェンス』という本なんです。このマグバニさんという方は、インド系のシンガポール人。かつてシンガポールの国連大使をやって、そして外務大臣をやって、今、シンガポール国立大学リークワンユー公共政策大学院の大学委員長をしておられる国際政治の専門家です。

彼が書いた、『グレイトコンバージェ ンス』というのは日本語に訳しますと大いなる収斂という意味になりますかね。エコノミストは今まで、収束の理論とか収斂の理論というのを時々、使ってきました、難しい話ではありません。ほとんど良識の話です。

日本やアメリカのように、所得水準が高い国は成長率が低いですよね。対して所得水準が高い国は成長率低いです。所得水準の低い中国やベトナムは、成長率が高いですよね。ですから、どこかで収斂していくはずであると。ほとんど否定しようのない経験則です。

しかし私たち今まで、まあそういうかたちで各国の所得は収斂するかもしれないけども、それは50年とか100年の話だろうと思っていた。ところがこのマグバニさんが言うわけです。そうじゃない、今まで地球社会が経験した事のないような、ものすごい速度でこの収斂が起こっている。

具体的に言いますと、今アジア全体で中間所得層以上と見られる人は、大体5億人いる。日本人は国際的に見ると、まあ全員中間所得層以上になります。韓国の台湾もほぼそれになります。中国でも2億人以上が今、中間所得層だとに言われていますから、足すとアジア全体で5億人が中間所得層以上。

ところがこの中間所得層が、2020年の時点では5億人から 17.5億人になっているだろうという数字なんです。で、これはアジアの各国の成長率を見ていくと、そんなに不自然な数字ではない。しかしどうでしょうか皆さん、2020年と言いますと、東京でオリンピック、パラリンピックが開かれる年ですよね。あと6年です。

国も企業も、2020年に向けていろんな準備をしてますけれども、その時に近隣の諸国の中間所得層の人が、今の数の3.5倍になっていると。そういうことを明示的に年頭に置いて準備をしてるでしょうか? いや、必ずしもじゅうぶん年頭に置いてないのではないでしょうか

マグバニ教授はそういうことを含めて、世界全体の体制が、国も国際機関も企業も個人も、このすごく早い収斂の動きにまだ対応できていない、そういうことを警告しているわけです。

例えば過去1年ぐらい見ると、先進工業国が再び力を持ってきて、新興国の全部ではないけど一部に不安がある。先ほどストラテジストの方もおっしゃってましたけども、そういう話もある。

短期的ではそれぞれいろんな波があるけれども、やはり中期的に考えると、私たちは今、非常に強いアジアの成長活力の中にあって、これからその成長活力の中で日本さえしっかりと、そのチャンスを取り込んでいけば、日本にもさらに大きなチャンスがある。そういうことを意味しているのだと思います。

繰り返し言いますが、2020年オリンピックに向けて日本がどうなっていくかという話も後で少しさせていただきますけれども、その時に周りの国のアジアの中間所得層が5億人から17.5億人に、今の 3.5倍ぐらいになってると、そのことを少し年頭に置いて、さあ、日本経済の話に集中して入っていきたいと思います。


 


アベノミクス、三本の矢について言及

日本の株価上昇に関して
皆さん、去年、1年、株でだいぶ儲けましたか? 手挙げなくて結構ですけどもね、 税務署にも言いませんから大丈夫ですけ。(会場・笑)

去年1年間、日本の株価は57%上がりました。世界にはたくさんのマーケットがありますけども、 これ、ドバイ、アルゼンチン、アブダビに次いで4番目に高い伸び率を、東京のマーケットは記録いたしました。

まあこれ、ドバイとアブダビと比べてもあんまり意味がありませんから、まあ、主要国の中で、日本の株価上昇率ははっきり言ってダントツの1位だったんで す。

アメリカの株価も30%弱ぐらい上がりました。ドイツも、ユーロがまあまあ安い中で経済改革が奏功して、株価も25%ぐらい上がってます。アメリカもドイツも良かった。しかし、そのアメリカの2倍ぐらいの株価の上昇率を日本は経験しました、57%です。

ちなみに1980年代後半、バブルを私たちは経験しました。今日、若い方にはバブルと言ってもよく分からないですね。でも、今日は大部分の方がバブルはお分かりだと思いますが。

学生によく聞かれます。「先生、バブルの時代ってどうだったんですか?」って聞かれるから、「うん、良かったよ」っていうふうによく言うんですけれども(会場・笑)、バブルのときの株価の上昇率というのは大体50%~60%、年間にしたらほぼバブルのときと同じような株価の上昇を去年、日本は記録したわけです。

まあ、少なくともその意味でやはり安倍内閣の経済政策、アベノミクスは、今の時点ではやはりちゃんと評価すべきであるといふうに思います。

国会を聞いてますと、相変わらず野党はしょうもない質問ばかりしていますけども、やっぱり良いところは良いと認めて、残った問題は何かということを建設的に議論をしないと、進歩がないなと思います。

そしてそれを受けて今年どうなっていくか。三本の矢という比喩を安倍総理は使われたわけですけれども、それは今どういう状況になっていて、今年どうなっていくんだろうか、もうここに尽きると思います。

皆さんにぜひ、事前 にお伺いしたいんですが、皆さんは今年、さらにアベノミ クスは勢いを持って、さらに日本の経済を良くしていくと思いますか? それとも、三本の矢は腰折れして、やはりまた問題がたくさん出てくると思います か? 無理矢理この2択の質問を受けたら、皆さんはどちらに手を挙げられるでしょうか?

もう一度言いますよ。アベノミクスの勢いが今後続いて、日本経済が発展する。残念だけれどもアベノミクスの問題点が出てきて腰折れして、そんなに良い発展は見込めない。1か2かどっちでしょうか? 来週また会議で安倍さんに会いますが、安倍さんには言いませんから、(会場・笑)教えてくただい。

1番の方、良くなると思う方 どのぐらいいらっしゃいませますか? はい、ありがとうございます。いや私、心配してるっていう方どのぐらいいらっしゃいますか? はい、ありがとうござ います。おお、これは大体4:6ぐらいですね。前者が4で後者が6。

これ、いろんなところで聞くようにしてるんですけれど、大体2:8か3:7ぐらいですから、今日4:6っていうことは今日はいい方が多いという(会場・笑)ことかもしれません。

私もいくつかの、ものすごく大きなチャンスを日本経済は持っていると思いますが、問題点も非常に多い、まだ残されていると思います。一つずつ具体的な話に入っていきましょう。


アベノミクス・第一の矢の評価は?
第一の矢というのは、デフレを克服するための積極的な金融緩和。異次元の金融緩和。今日は時間がありませんので、細かい話はあまりしないでおくことにします。結論から言いますと、この第一の矢はきちんと放たれたと言っていいと思います

ダボス会議で、黒田総裁と私と二人並んで世界の投資家の前で話すセッションがありました。で、黒田さん金融政策の話をして、私は第三の矢の話をして、当然のことながら第一の矢の評価が高くて、第三の矢、評価低いですから、私は大変不利な立場に立たされて話をしたんですが。(会場・笑)

基本的に黒田さんが就任されてから最初の、昨年の4月4日の審議政策決定会合で、日銀が出すお金、ベースマネーと言いますけども、このベースマネーを2年で2倍にするという明確な目標を立てて、そしてそれが経済の景色を変えて、期待を変えて、株価の上昇につながっていった。これは間違いないことだと思います。

そして消費者物価の上昇率も、12月の時点では1%を超えています。ただし、コア物価はまだ1%には達していなくて、これを2%に持っていくためには、さらにもう少し時間がかかるわけですけども、一応、政策はきちんとやってるし、その成果も少しであるけれども現れてきている。

もう、消費者物価は全体の数字としてはマイナスではありませんで、1%を越えています。そのように申し上げて良いと思います。

今年の4月に消費税率を引き上げる。で、私はやっぱり消費税の引き上げというのは、そんなに楽観できないと思います。間違いなくこれは、経済に対してマイナスの影響をもたらしますので、あまり、そこは楽観しないほ うがいいと思いますが、黒田総裁もそういう事態に備えて、柔軟に対応する。

つまり、第一の矢をさらに追加的に放つ可能性はあるということを随所でお話をしておられますので、私は黒田さんのそういう運営能力も含めて、第一の矢は、今後も比較的順調に飛び続けてくれるものだというふうに認識をしております。細かい点はいくつかありますけれども、大きな評価として、第一の矢については、今のようなことを申し上げておきたいと思います。


竹中平蔵さんの基調講演・その②へ

アベノミクス第二の矢の真実とは?そして第三の矢はきちんと放たれるのか? 竹中平蔵さんの鋭い指摘は続きます。


マネックス証券の口座開設

今回のような「お客様感謝デー」に参加するのは、事前にマネックス証券の口座を保有しておく必要があります。実際にトレードするしないにかかわらず、竹中平蔵さんの講演などを聞けるのであれば、保有しておくべきですね。


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